第5章 浮気
「…どうせ嘘だろ」
「お前はどこまで疑えば気が済むんだ…」
ローが近づいてきて嗅いだことのない香水の匂いがする。
「だっから、その香水…」
「あ?…もしかしてかけられたのか?」
そのようだ。絡まれただけじゃこんなにおいつかない。ずきずきとまた心が傷つく。
「あークソ」
バッと服を脱ぎ捨てた。ローの鍛え上げられた筋肉と、上半身の刺青があらわになった。
「ちょ、脱ぐな!」
「あ?今更だろ」
「…」
悔しくて下唇をかんで涙が出るのをこらえる。
「オトハがガキっぽいだとか、口が悪ィとか可愛げがねェとかなんだろうが、俺はお前が全部好きだ。お前よりいいナースはほかにいるわけねェんだよ」
ぎゅ、と私を抱きしめる。もう香水の匂いは全くしなくて、いつものローの匂いがする。
「…うっさい」
「だから、なんも心配すんじゃねェ」
「じゃあ、今度おごれよ」
「いくらでもおごってやる。ほしいの全部な」
「…ん」