第3章 アネモネ
鼻歌を歌いながら、甲板で本を広げるオトハ。ローの言った通り、夜は冷えるので暖かい上着を着ている。
ふと、頭に飾られた赤いアネモネを本に挟んでいたのを思い出した。
「これ、花言葉なんだっけ…」
昔本で読んだ気がするが、思い出せない。
「そんなところいると冷えるぞ、オトハ」
必死に考えていると、ペンギンが暖かいココアをもって来ていた。
「あ、ペンギン…。ありがとう」
「何持ってるんだ?」
「あァ、これ、赤いアネモネなんだが…、花言葉が思い出せなくて」
ココアをすすり、一息つく。
「俺知ってるぞ」
アネモネを見るなり、ペンギンがぼそりとつぶやく。
「ほんとか!?なんだ、教えてくれ!」
「…“君を愛す”」
「え?」
「愛の告白だ、って聞いたことがある」
「……まじか…」
「もう遅いし、早く寝ろよ」
そう言い残してペンギンはオトハのもとを去る。
「恥ずかしいじゃねぇか…」
オトハは顔を赤くし、その場にへたり込んだ。ローのことを思い出して、きゅうとおなかの下あたりが疼いた気がする。
急に会いたくなって、アネモネを本に挟みココアをもってローの部屋へと向かった。まだ、デートは終わってない。