第8章 女王と月
「だって波瑠、濁すと伝わらないから」
「そうかもだけど...」
「かもじゃない。
伝わらないから」
「そこまで鈍くない」
「さぁ。
どちらにしろ覚えてるなら話は早いよね」
「わ、ちょ...」
膝裏に手を回され、抱え上げられる。
「黙ってて。
このまま床でしたかった?」
「そういう訳じゃないけど...でも自分で歩ける」
「僕がそうしたいからしてるだけ。
これは僕の意志だ」
そう言われてしまえば、抵抗が出来なくなる。
大人しく首に手を回す。
私の部屋に着くと、ベッドの上に身体を降ろされた。
確かに床よりはフカフカしてて痛くはないけど。
「最後の確認だけど」
「要らない。
確認しなくても大丈夫だから」
「分かった」
蛍を見つめれば、笑みが返って来た。
顔が近づいて来るのを感じ、私も顔を近づける。
「ん...」
唇が触れ合えば、蛍の温もりと匂いから気分が高揚する。