第4章 誘惑・・・? *五月*
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何処から逃げたか分からないが、部屋に残された鶴丸と俺はいま対峙している。少しばかり着崩れた着物を治す鶴丸を見下ろしできうる限りの笑顔で問いかけた
「…姫と何をしていたのだ?」
「何って、そういうことだが?」
あまりに飄々と答えるものだから一瞬殺意すら覚えたが、それをこらえさらに続けようとしたが、先に口を開いたのは鶴丸だった
「姫の身体はよかったぜ。多少乳房が小さいのが気になったが…。思った通り綺麗な体してたぜ?」
「…当然だろう、あの姫だ。美しいに決まってる」
「だろ?だから、誰かに取られる前に取ろうと思ってな」
そういう鶴丸の顔が、どこか勝ち誇ったような顔をしていたから俺はハハハと笑った
「お主、それで勝ったつもりか?」
「いや?最後までさせてくれなかったからな。…今度は逃がさねえよ?お前も分かってるだろ?この本丸にいる奴の半数ほどが彼女を狙っている。まぁ、これに乗じて主を狙ってるやつもいるがな」
ニッと笑う鶴丸だが、奴の顔は敵を前にしたときの笑みと重なった。
鶴丸は俺にそう言いながら部屋を出ようとした
「…あいつは俺のものでもあんたのものでもない。負けねえからな」
そう言って部屋を出て行った鶴丸を俺は襟首を掴んだ
「うぉ!?なんだよ!!」
「…鶴丸見~っけ」
にっこりと笑うと、鶴丸はあ…と間の抜けた声がした
そのまま俺は鶴丸を粟田口の部屋へ連行した。
鶴丸を連行しつつ、俺は冴姫の部屋を見る