第11章 思い人
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一期さんの後を追って泳ごうとした瞬間、足に痛みが走った
足をつったとは全然違う痛みで泳ぐことができなくなった。その上少し高めの波が来てしまって、体がそのまま沈んでしまった
息ができなくて、助けも呼べない
どうしよう・・・どうしよう・・・ッ!!!
焦り始めたらもう駄目だった
動く方の足を動かしても全然泳げないし、むしろ自分が泳げているのかもどっちに進んでいるのかもわからなかった
その時、いきなり身体が軽くなった
ようやく息ができるようになったあたしはせき込みながら息を整える
「何やってんだよテメエは!!!」
『ケホッケホッ!!…ッあ、兼さ…?』
「お前、助けに行っておぼれてんじゃ世話ねえな全く」
『はぁ…す、すみませ…』
「…ほら、さっさと戻るぞ」
と、兼さんがあたしの手を掴むがあたしは足がしびれていて泳げなかった。見かねた兼さんはあたしのことをお姫様抱っこの状態で泳ぎ始めた
『や、あの…すみません。』
「…別に構わねえよ。でも、あんま危ねえことはすんなよ。」
と、浜辺を見つめている兼さん
お姫様抱っこをされていると、その顔が下から見えた
ドキッ・・・
と、兼さんの顔を見た瞬間あたしの心臓が苦しくなった
あたしはその感覚が記憶にあった
そう、お市の方様が浅井長政様と一緒にいる時の気持ちと一緒だ。市様は本当に長政様をお慕いしていた、だからその思いがあたしにも伝わっていた
その時と同じような気持ちだった
・・・ってことは、あたし兼さんのこと・・・