第3章 保健医×にのみや先生
…罠だとしても、私にはチャンスだ。
だってこんなシチュエーション、なかなかない。
先生の背中に、腕を回したい。
このままぎゅって、抱き着いてしまいたい。
だけど、私の腕は伸びかけて、迷ったように降りてくる。
どうして、こんなちょっとの勇気が出ないんだろう。
『…せんせい、私、せんせいのこと好きだよ』
腕を伸ばせない代わりに、いつもいつも言っている、そんな言葉を呟いた。
先生はくすっと笑って、知ってるよ、と呟く。
『ほんとだよ?ほんとに、本気なんだってば…』
「ふーん?…じゃあ、せっかく、相葉さんが気利かせてくれたんだから」
空気読んだ方がいいんじゃない、ともう一言添えて、
先生は私の手首を掴み返す。
そのまま、私の手は誘われて、先生の華奢な背中に回された。