第1章 数学教師×さくらい先生.
『ううん、だいじょぶ』
雑誌を立ち読みしていると、すぐに彼氏が来て、
とりあえず近くの公園までぶらぶら歩くことにした。
「予備校?ほんと大変だな遅くまで」
『そーかな?大学生の方が忙しいでしょ』
薄っぺらい会話。お互い笑ってみるけど、なんとなく気まずい空気が流れる。
彼は、なんかいつもよりそわそわしていて、
何か言いたそうに、私の方をちらちら見る。
『なに?どうしたの』
「いや…うん、あのさ」
公園の前で、立ち止まって、彼は私の方に体ごと向き直った。
真剣な顔で、ちょっと困ったような顔で。
それだけで、振られるってすぐにわかった。
「ごめん。別れたい」
『…なんで?』
「うん…、やっぱ、なんていうか。
やっぱ年の差、厳しいなって」
なにそれ。
理由になってないよ。
年の差なんて関係ないじゃん。
大学生も高校生も、何も変わらないよ。
確かに私は子供かもしれない、
ものたりないのかもしれない。
だけど別れたくない。私にとって、
大事な、
自慢の彼氏だったのに。
『…わかった』
そういう素直な思いがひとつも言えなかったのは、
きっとちょっとでも大人に見られたかったのかもしれない。
少しでも、背伸びしたかったのかもしれない。
私は文句ひとつ言わず、涙ひとつ流さないまま、
綺麗に彼と別れた。
「駅まで送ってく」
『大丈夫、ここでいいよ』
道の真ん中で、私と彼は別れた。
風が冷たくて、手がかじかんで。
立ち止まっていられなくて、行く先もわからないまま
そのまままっすぐ歩いて、
彼と向かうはずだった公園まで来てしまった。