第1章 数学教師×さくらい先生.
『…もう、携帯鳴らしたりしませんから。すみませんでした。失礼します』
部屋を出ようとお辞儀をしてドアに手を掛けた瞬間、急に先生の顔が近付いた。
「俺の気引きたいなら、また鳴らしてもいいんだけどね」
なんでそんなこと言うの。なんでそんなにからかうの?
クールで、生徒に興味がなくて。いつも落ち着いてて。
そんな先生が、こんなに意地悪に、私をからかってる。
「その気の引き方、正解かもよ」
『…えっ…』
先生がこぼした、一言。
今までの言葉が全部、頭の中をもう一度駆け巡る。
もしかして、先生、私の事、少しは気になってくれてるの…?
昨日のあのときから、
こんなに意識していたのは、私だけじゃなかったの…?
甘い期待に、ドアに掛けた手が震える。