第1章 数学教師×さくらい先生.
「えーとだからこういう問題の時は、まずaの値が0より大きいのか小さいのかを求めなきゃいけなくて…」
教室の中、櫻井先生の滑らかな数Ⅰの解説をBGMに、私は他でもない、その櫻井先生のことを考えていた。
昨日、あんなやりとりがあった後、
何事もなく、私は無事家まで送り届けられた。
因みに、予備校の帰りだったということを考慮して、生活指導リストに名前を入れることは免除して貰った。
家に帰ってから、少しは別れた彼氏のことでセンチメンタルな気分になるかな、と思っていたけど、ちっともならなかった。
「年上の彼氏ってことを自慢に思っていただけ」
櫻井先生に言われたことで、そう気が付いた、っていうことも大きかったのかもしれない。
でも、そんなことより、何より…
…あろうことか、私は櫻井先生を意識してしまっている。
「でー、この問題の場合は親切にaの値を場合分けしてくれてるんだけど、普通は自分でしなきゃいけないのね。どうやるかっていうとー…」
そんな私の気持ちなんかちっとも気付かずに、
櫻井先生はいつもと何も変わらずに、今日もわかりやすい授業を展開中。
あー、全然頭に入ってこない。
ていうか、思わせぶりだよ。実際。
手触ったりとか、顔近かったりとか、
わかっててやってんのかな?だとしたら本当にずるすぎ…
~~~~~~~~♪
『!』
やばっ!またやっちゃった…!
「…また か。はい、携帯出して」
放課後、またお説教か…。