第8章 【菅原】待った者同士
「は?」
雪がしんしんと降り積もる12月から1月の年末年始期間。散らばった上京組も帰省するタイミングな事もあり毎年都合をつけて集まる烏野バレー部会。
「結婚する事にしたんだ」
と飲み会も中盤、社会人になって第1次?第2次?結婚ラッシュに乗っかって、大地が道宮を隣にしてそう言った。
来たときから不思議な感じがしていたのはこれだったかと妙に納得できたのは、いつもなら離れ離れに座っている大地と道宮が今日は始めから隣同士に座っていたからだ。
「おめでとう大地!」
周りからの祝福を喜ぶ大地と隣で幸せそうに笑う道宮。道宮は昔から大地が好きで、それは社会人になってもで同窓会の度に頬を染めていた。そんな道宮の想いがやっと通じてとても喜ばしい事だ。
けれど、男バレは知っている。道宮と同じ想いを抱いて道宮と同じ期間大地を慕い想っていた奴を。
「大地おめでとうぅぅうぅぅ」
そう、今日一番最後に来て席がないからと誕生日席になってしまった名が隅っこで泣きながら祝う。
「結もおめでとぉぉ!これで澤村結だねぇぇぇ」
「名ちゃん、ありがとぉぉ!」
大地への好きは恋愛ではないと言い続け、道宮の相談にものるようなお人好しのこいつは清水と一緒に男バレのマネージャーで、大地も含め皆が大地に好意を寄せているのを知っていた。
「大地がお嫁にいっちゃうよぉー」
「嫁に行くのは道宮」
祝福するのも落ち着き、なれ初めに聞き入る周りと、その輪には入らずひたすら端で飲む名に
「今日は名が泣き上戸だね」
と隣で冷静な清水。大地を気に入る奴はどこか似るのか道宮が泣けば名も泣くし、名が泣けば道宮も泣くしで毎度面倒くさいのだ。けれども今日は
「大地ぃぃ。結ぃぃ。」
と名だけが泣き、対角にいる道宮が幸せそうに笑う。
祝ってやりたい気持ちと、残念に思う気持ちで複雑なのだろう。
「ホラ、名、水飲め水。」
たいして飲めないくせにマイペースと言えどもずっと飲みっぱなしだ。
「スガァァァァ」
「おーよしよし。大地が嫁に行って寂しいなぁ」
とジョッキ片手に机に頭をつけるバカ娘の頭を撫で
「だから嫁に行くのは道宮さん」
と言う旭に
「分かってるよ!そういう東峰は彼女とどうなの!!」