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君と並んで歩く未来

第5章 極星のマリア


「学生寮?…聞いたことないなぁ」
「ええ!?いや嘘でしょ?合格通知と一緒に寮の案内が…ホラ」
そう言って彼、創馬は寮の案内の紙を用務員の人たちに渡す
「本当だ…なになに、極星寮…」
紙を覗き込み内容を見てもピンとこない様子の用務員
「うーんでもなぁ。多くの学生は学園近くにマンション借りて通学してるし、金持ちのお宅は毎日送迎車だ」
「昔は寮もあったのかも知れないけど…」
用務員もお手上げ状態のようで埒が明かないので創馬とずっと静かに隣にいた瀬凪は紙を受け取り
「んじゃ、現地言って直接聞いてみますわー」
「お手数おかけして申し訳ありませんでした」
瀬凪は律義に頭を下げていった。しかしその時創馬は気づいていなかった。というよりは忘れていたこの学園が驚くほど広いということを
「大丈夫?」
あまりにつかれている様子に瀬凪が心配そうに労わる
「やっぱり自分のものは自分で持つよ」
「何言ってんだよ。そんなことしたら瀬凪の体力が持たないだろ」
「でも…」
「いいから、俺はまだまだ大丈夫だから!」
そう、今彼女が持っているのはリュックのみ。もう一つの彼女の荷物であるボストンバックは創馬がこの広くて坂道の多い敷地を歩き回るのに彼女が持っているのはつらいだろうと代わりに持っているのである。彼女は渋々といった感じだが
「それにしても…学園のそこかしこに仰々しい建物がめっちゃあるなー…」
「そうだね。用途がわからない建物もあるけど」
二人は、というより創馬は空腹と寒さを紛らわすために声を出して歩く。瀬凪はそれに相槌をうつ
「創馬、せめて私のマフラー使って」
そう言って彼女は半分無理やり彼の首にマフラーを巻き付けた。本当はコートを使ってほしいが何分サイズが合わない。巻きつけているとき瀬凪の香りがフワッと創馬の鼻に香ってきた。柔らかくてほんのり甘い花の香りだ。それに彼は顔を赤くする
「おう、悪いな(何で同じ洗剤使ってんのににおいが違うんだ…?)」
そんなことを考えながらマフラーに赤くなった顔を隠すように鼻のところまで埋めた。しかし逆に香りがより鮮明に香ってきて意味のないものとなったが。彼女がそんな彼の心境を知るはずもない
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