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君と並んで歩く未来

第3章 魔王、『玉』を語る


編入試験からひと月と少し____4月
「学年賞の授与にうつります」
桜舞うこの季節、此処遠月茶寮料理学園ではほかの一般的な学校と同じように始業式が行われていた
「新一年総代薙切えりな」
「はい」
花びら流れるその風に髪を靡かせながら堂々たる振る舞いで返事をするえりな。その姿は一つの絵画のように美しい。目の前で繰り広げられる美しい光景に新一年生達は恍惚とした表情でざわめく
「ああ…えりな様今日も麗しい…」
「あの美貌でしかも主席…まさに完璧超人!」
「内部進学試験全科目ぶっちぎりで1位だったらしいぜ」
「1日デートできたら俺死んでもいい…」
「バカっ滅多なこと言うと学園から抹消されるぞ」
彼らのざわめきが聞こえているのか否か、えりなは最後までその堂々たる振る舞いのまま歩みを進める
「_続いて式辞を頂戴いたします」
「相手は食のマフィアを率いる首領の実の孫娘なんだぜ?」

遠月学園総帥___薙切仙左衛門

えりなの祖父、遠月学園の総帥が式辞のため壇上に上がる。そのどこまでも威圧的な容貌に生徒たちは恐怖に慄く
「諸君高等部進学おめでとう!」
マイクを介して広がる仙左衛門の声にざわめきはピタリと止まり、生徒全員が壇上に目を向ける
「諸君は中等部での3年間で調理の基礎技術と食材の理解を深めた」
実際に料理を行う調理教練の授業と各種の座学、栄養学調理理論、公衆衛生学、栽培理論、経営学…
「そして今高等部の入り口に立ったわけだが、これから試されるのは技巧や知識ではない」

料理人として生きる気概そのもの___

その言葉の意味が理解できないのか新一年生のうちの多くの人が疑問符を浮かべている。その様子を見ながら仙左衛門は人差し指をゆっくりと生徒たちに向け
「諸君の99%は1%の玉を磨くための捨て石である」
その言葉に多くの人たちが驚愕に顔を歪める
「昨年の新1年生812名のうち2年生に進級できたのは76名」
無能と凡夫は容赦なく切り捨てられる。千人の1年生が進級する頃には百人になり卒業まで辿り着く者を数えるには片手を使えば足りるだろう。その一握りの料理人に
「君が成るのだ!!」
その言葉たちに生徒たちは奮い立つ

研鑽せよ
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