• テキストサイズ

君と並んで歩く未来

第1章 果てなき荒野


店内にいる人々は一方向に視線を向け固唾を呑みながら静まり返っていた。視線を一身に受けるは一人の少女。少女は綺麗に盛られた二皿の炒飯を一口ずつ食べていた。口にある鮮やかな味を醸す其れを飲み込みしばし考えにふけるように顎に手を当て沈黙すると、片方の皿に手を向け「こっち!」と笑った

すると見守っていた観衆はたちまち歓声をあげた

「おおー決まった」
「料理勝負は今日も親父さんの勝ちー!」

声を受けるは二人の親子。負けてしまった息子の方は床に膝と手をつき項垂れており、対照的に親父さんと呼ばれる男は片手を上に掲げている
「むー………」
息子、__幸平創真は不満そうに、唸っている
「どうやら今日のところは俺の負けのよーだな」
プイッと顔と体を背けた彼に父親__幸平城一郎があきれたように
「一度でも勝ってから言いやがれ」

「まだまだ修行が足りねーな。創真」

「そろそろ500敗目に届くんじゃないか?」
からかう様に紡がれた言葉にムキになったように言い返す創真

「つーか…親父さんの飯マジ美味すぎ」
「この味がいつでも近所で食べられるなんて超幸せよね…」
先程まで親子の勝負を見守っていた観衆達は城一郎の作った料理を食べており、幸せそうな雰囲気を醸し出していた

そんな雰囲気に落ち込む創真に声をかけたのは先程親子の勝負の判定役を担っていた少女__倉瀬真由美だ
「で…でも!幸平くんのもすごく美味しかったよ。こんな美味しい炒飯食べたことなかったもん!」
落ち込む創真を励ますように焦りながらも言葉を発する

そんな彼女に励まされたのか、まだ元気は無いもののあるものを取り出した
「…ありがとう。今朝こしらえた新作料理もあるけどよかったら食べるか?」
スっと出されたタッパーに表情を明るくし
「いいの?たべてみたいなっ」と返事を返したのが恐らくこの日一番の失敗だったのだろう
/ 50ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp