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君と並んで歩く未来

第1章 果てなき荒野


「炙りゲソのピーナッツバター和え」

周りに激震が走った瞬間だった

「(うおおっ今回はまた)」
「(一段と凄そうな…)」
勿論この凄そうは悪い意味のものである

「さぁおあがりよ…」
怪しい顔でゲソを箸で掴み倉瀬ににじり寄る「あ…や、やだ…」顔色を悪くし逃げ腰になる少女に更に笑みを深め「笑えるほど不味いから!」と、全く安心しない所か逆に怖くなるようなことをぬけぬけと抜かす創真

隙を見て倉瀬の口の中に突っ込んだ

後に少女は語った

ゲソの風味が良くない方向に変貌を遂げ身体じゅうをまさぐられる様な不味さでした…



料理とは果て無き荒野そのものである

美味さも不味さも数限りなく点在する荒野

その地平の彼方まで

「俺は…歩いていきたいと思ってる……!」
「るっせーバカ一人で歩いてろ!しっかり!大丈夫!?」
一人語る創真に暴言を吐きながら倒れて唸る倉瀬に声をかけている友人。それらに視線を向けながらヒソヒソと話す同級生達

「アイツは失敗作すら嬉嬉として食わせたがるからな…」
「その癖さえ無けりゃまともな料理人なんだけど…」
そう評される本人といえば

「俺の『煮干の苺ジャム添え』もキツかったよなあ創真!」
「あーアレな!ホント壮絶な不味さだったわ~」

ああ…この親にしてこの子ありか…

彼らは悟ったのだった
「あれ、倉瀬さんどうしたの…?」
未だ倒れて唸っている倉瀬に声をかけたのは今までその空間には居なかった少女だった。

「おー、瀬凪!遅かったなー」
そんな彼女に気が付いたのか創真が声をかけた

瀬凪と呼ばれた少女__朝比奈瀬凪は此処、食事処『ゆきひら』に居候する女の子だ

創真の言葉に首を軽く傾げながら うん 、と頷いた

「弓道部の子に頼まれて試合に行ってたんだけど…それより倉瀬さん大丈夫…?」
眉を下げて倉瀬に目を向ける瀬凪
「聞いてよ瀬凪!幸平ったら真由に無理矢理ゲソ食わせたのよ!」
「ゲソ…?」
話が掴めなくて更に疑問符をとばす彼女に今まで起こった事を教える友人。話が進む度に創真を見る目が冷たくなっていく
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