第29章 大切な心
6年後の今日の夕方、それはちょうど告別式が行われている日と時刻らしい。
だが…これは後に聞いた話だが、蘇ったそうだ。
棺桶に寝かされ、ギルドの中の一角を貸しきりに行われていた最中…変化は訪れる。
参列者の中には冒険者だけでなく、一般市民から商人、神様に至るまで幅広く多岐に渡っていた。
6年後のケイト視点――
何かに寝かされている雰囲気、左手を目の前へ上げると花がついてきた。
ケイト「なんだ?これ…」
僅かに目が開き、掠れた声とも言えない声が喉から出た。
とても渇いていて、辺りへ視線を向けようとすると…最初に耳を刺したのは…
ラウルの泣きじゃくる声だった。
ケイト「……ここ、は…」
今度はちゃんと出た声…それに逸早く反応したのは他ならぬフィンだった。
フィン「ケイト!!」
どんっ!
ラウル「ごはあっ!」←第二軍率いての遠征&迷宮帰りで疲れていたため壁に叩きつけられた時に吹き出した、帰ってきたばかりの時に葬式について教わって寝耳に水で駆けつけて嘘だと喚きながら棺桶に縋り付いて泣きじゃくっていた所
テロップ『長い』
ラウル「ひっ…ひどいっす…団長っ;」ぴくぴく
フィン「ケイト、僕がわかるかい?」←ケイトの背に手を回し抱き上げる
ケイト「…うん。フィン…死後硬直が、ながくって…うまく、動けないや…のど…かわいたなあ」
フィン「そうか…(涙)
よかった……よかったよ、本当にっ」ぎゅうううう
ケイト「フィン…重いよ…重い…」
フィン「心配させないでくれ。人生で一番死にたくなったじゃないか」ぷるぷる
ケイト「んう…ごめん…ごめん、ね。…フィン」
フィン「ケイト…」すっ
ちゅぅっ
フィンからケイトへの涙ながらのキスが、何度も交わされる。
何度も何度も、失っていたものを求めるように縋るかのようにそれは続いた。
周囲の目が何事かと集まる中、その光景は…起こったこと(ケイトが蘇ったこと)を知らしめるのに十分な効果を発揮した。