第27章 変化
大きく息を吸って吐く、ミノタウロスの準備運動のような動きに戦闘再開の予兆を感じ取った。
その視線の先は何故かケイトの後ろで、咄嗟にそれぞれが武器を構え、咄嗟に飛ばした指示の元に最適と思われる隊形を取る。
両手と両膝を地面に着けてミノタウロスは前へ屈む、前傾姿勢のそれは今にも突っ込まんとする気迫を感じさせられた。
目の前の状況の変化を把握した次の瞬間、下を向いていたミノタウロスの顔が上がると同時に叫んだ。
フィン「総員構え!来るぞっ!!」
次の瞬間、ミノタウロスの姿が掻き消える。
それと共に四度、何かが爆発したような音が上空から響いた。
ロキ・ファミリアは揃って姿を追おうとし、全員が上を見上げてあったのは頭上の天井の巨大なヒビ割れた跡。
僕達は相手をするまでもないのか?
目の前に現れようとしないミノタウロスに対して
そんな思いが生まれかけた瞬間、更に強い確信が疑惑を掻き消した。
そのまま更に振り返って、ロキ・ファミリアより更に後方に居る別のファミリアとの中間地点の地面には天井と同じようなヒビ割れ陥没した地面。
他のファミリアも振り返っていた姿、誰も彼も動きを捉えることは出来たが反応出来ず見送るだけだった。
一人以外は…
ケイト「椿!!構えて!!!!」
椿「む?」
顔を上げた次の瞬間、ミノタウロスが椿の目の前に現れた。
フィン「!狙いはアイテムか!!」
ぶおんっ!!!
あまりに早い腕の振りは音速を超え、サポートメンバーとして来ていた鍛冶師とサポーターを共々薙ぎ払った。
辛うじて間に合ったケイトが皆へ張った障壁から迷宮に叩き付けられた衝撃は大したこともなく、五体無事の姿があった。
その衝撃波からほとんどの武具やポーション類が砕かれ、ケイトが飲んでいたポーションを掴んで呷った。
「ヴオオオォォォォォォォ!!」
そして用は済んだとばかりに全てを粉々に踏み砕いていく。
椿「手癖の悪い獣じゃのお!!」
居合いで椿が斬りかかるもそれは即座に避け、背後に回り、音速の攻撃を繰り出す。
ケイト「パイオニア、大盾!!」
すかさず棒を椿とミノタウロスの立つ間(地面)へと投げ付け、突き立てた瞬間に大盾へ変形するよう指示し、防いだ。