第82章 光芒(こうぼう)
二度と――動けない
二度と――そこから出れない
二度と――囚われの身から解放されることは叶わない
そうなったとしても――皆が生きられるのならと、支配者としての力に、権限に、決して手を染めることも無く…ただただ、実在化の糧として、生贄として、在り続ける
魂が、死を迎える最期の瞬間まで
次期後継者が現われるまで――何があっても続くそれは…解放することは叶わない、引き継いだ瞬間から…ずっと……
それでも決めたんだ…二度と――喪わせないと、絶対に!!
フィン「君は…いつもそうだね」ぽつり
いつでも…自分さえ犠牲になればと考えている
どうせ誰かが犠牲になるのなら、と…
必ず、自分以外を優先する…たとえ、それが敵であったとしても…癌であったとしても――絶えず、変わらず
いつでも、どこでも、どんな相手であっても…そう選択する
前世でのある光景が浮かぶ
前世、君はお偉方を窮地から救って褒美として馬(爆太郎の前世)を貰った
足軽組頭になったのも、この頃を境にしてらしい
そして…家に一度ついてから、散歩も兼ねて乗ってみた
ら…
勝手に歩き出して、そのままあれよあれよと言う間に…
正能(ケイトの前世)(ここはどこだ…;)たらーり
知らぬ敷地内に辿り着いていた
やっと止まってくれた…
そんな安堵と共に降り、すぐ傍の木に結んだ
「誰ですか!!?」
びくぅっ!!
小さな小窓から、縦の格子越しに叫び声が響いた
正能「怪しいものではない!
済まない!驚かせてしまって
馬に任せていたら辿り着いてしまって」あせあせ&おろおろ
必死に、誠実に答えようとした
だが…戸惑いの方があまりに大きく
「…鞍は無いのですか?」
正能「鞍は…売った
どうしてもと縋られて」
困窮しているのかしら、と、はたと思った
身なりを見ると…少しみすぼらしながらも、しっかりと整えられていた
正能「それに…」
「それに?」
正能「鞍を、嫌がっているようにも見えた
無理に付けるのも忍びない」
そう笑い掛け、馬を優しく撫でる姿に…馬も凄く落ち着いているようにも見えた
馬との信頼関係を築くのは、非常に難しい
殊更戦国時代においては、馬は使い捨てが基本だった…
だというのに…自然とそれが出来ているのが見て取れた……