第82章 光芒(こうぼう)
ケイト「ぐっ」
辛うじて身を逸らそうとするも、微動だに動けない
せめて目を瞑り身構える中…凄まじい熱波が襲ってきた
ぼおおおおおおおおっ!!!
神剣が火を吐いて、その時になって結界の存在に初めて気付いた
手錠を起点に、球状に結界が発生している
フィン「ケイト!!?無事か!!?」
リヴェリア「結界だ!!それも強力な!!!
これでも破れないということは相当だぞ!!」
フィン「くそっ!!どうしたらいい!?」だあんっ!!←結界に拳を叩き付け歯噛みする
身も起こせないまま、満足に微動だにも出来ないまま、かけられた布団が宙を舞って火により燃え尽きてゆく
動こうといくらしても、震え以外何も出来なかった
それを境に眠気がマシになった
その折…
ぷしゅうううっ!!
『!』
フィン「何!!?」
リヴェリア「ガスだ!!」
濃い紫色の睡眠ガスが部屋に流され始めた
フィンが危ないとわかった直後、体が、声が、弾かれるように動いた
ケイト「逃げろ!!!
上空は、魔力が、薄い!逃げれる、はずだ!!」頭持ち上げる
フィン「だが!!このままじゃ…ケイトが!」
ケイト「俺のことはいいから!俺に構わず逃げろ!!」
フィン「でも!!!」
リヴェリア「フィン!!もうダメだ!!!ガスが回ってきてる!!!」
フィン「いやだ!!!」瞑目し頭を振る
ケイト「逃げろおおおおお!!!!」かっ!!!瞳発光
リヴェリア「フィン!!!!」神剣の風魔法で宙に浮きガスを遠ざけ離脱準備
ケイト「逃げ……ろ」ピクッ←ガスが体に回り意識が朦朧としてきている
辛うじて持ち上げていた頭、瞼までもが脱力したまま、ぐったりとしていく姿を見て…
フィンは覚悟を決めたのか、俺を真っ直ぐに見て言い放った
フィン「待っててくれ…必ず!助けに戻る!!!」
リヴェリア「掴まれ!!!」
フィン「ああ!!!」
ばっ!!!
そのまま風魔法でフィンとリヴェリアが飛び立って行った瞬間…
煙が再び間近に迫る
逃れる術も無く、吸う以外に無いまま
今にも途切れそうな意識の中で―
ケイト「……
フィ…ン……」
がくっ
枕に頭が崩れ落ちる前に…一番の人の名を、無意識に呼んでいた――
辛うじて持ち上げていた頭が、すっぽりと枕に落ちる
手錠の下に敷かれた枕よりも柔らかなそれは温かく
優しく、俺を眠りへと誘った
