第80章 願い
不意に――意識が、現実に戻ってきた
大事なことを、伝えたいことを…与える為に、私の魂の中に、私の意識が呼び出されていたらしい
フィンと抱き締め合ってから…数秒も経っていなかった
自然と流れ出る涙に…身を任せて、思いっ切り泣いた
完全に…一つになった
それを、悟って……
でも…いつでも出れるらしい
ふふっ――ずっと一緒よ
そんな声(始祖神)が、魂の中でした
ああ――ずっと一緒だ
それに…
不意に、笑みが浮かんで、微笑し、満面の笑みを浮かべた
ありがとう――ずっと、待ってくれていて
その言葉に…
どうか――忘れないで
あなたは私、私はあなた――それは、決して変わらないのだと
あなたがあなたである限り、私であることも同じなのだと
そう、真剣な想いが伝わってきた
ああ――わかったよ……
それに同じく…真剣な表情で、想いを伝えてから……
…‥お母さん(始祖神)
微笑し、満面の笑みで、そっと抱き締めた
自分の魂ごと、大事なものとして抱えるように……魂で、力で、想いで、両腕を作って
それに…内から抱き返された……もう二度と離さないという温かな想いが、身を心をも魂ごと全て包み入れてくれた
願いとは――元来、人を幸せにする為に行われたことだった
だが――それは、時として…暴走を生む
そうならないように、規則を作った
『後始末や皺寄せを減らすように努めよう』、と
人を雁字搦めに縛り上げたり…身動きの取れないようにしたり…死なせたり殺されたり傷付けられることを横行させない為にも
その「暴走」に、共通して言えることがある。
『幸せになって欲しいもの』の願いに、想いに、「寄り添っていない(合わそうとしていない)こと」だ
その本質を、「癌」だと言うのではないだろうか
それに気付いて、踏み止まる行為こそが――染色に抗うという行為ではなかろうか
そう思って病まなかった
それに、始祖神は小さく頷いた
同意するように…
微笑みながら……
人の幸せを願うだけではダメだ
きちんと幸せにしたい人と向き合って、その願いに、想いに、寄り添わなければ…
幸せにしたい人の為に、不幸な人を作っていいなんて理屈は無いんだから―――
たとえそれが…自分であれ、他人であれ