第76章 冒険者依頼(クエスト)、来訪
卵が孵らなかった理由は、至極単純なものだった。
魂を込めるものが、いなかった。
神の力の素養を持ち、始祖神の原初の魂がいなかった。
始祖神本人と言える人物で、その力を…『魂を0から生み出す始祖神の力』を持ったものが……
建物内にあった石板は、女神の来訪を意味していた。
リヴァイアサンを倒し、訪れ、そして…
光が国中に差し込む、そんな…そんな未来を――
タイムマシンとやらで、それを見たのだろう…
目が見えないながらに、エルに必死に手を伸ばし、手を掴みながら、
よいか…よいな…と、幾度となく言い続けたのは…これを伝える為だったのか……
この…天変地異とも言える、神々しい光景を……
オルガナによると…
外の時間に応じて光の強弱は変動するらしい…
今こんなにも眩しいのは、昼だからだろう。とも……
ケイト「なあ、クゥー…お前はどうしたい?」
クゥー「く!」
ケイト「え…
どうしてもついていきたいのか?」
クゥ―「く!」こくこく
ケイト「あ…ありがとな^^;
じゃあ…よろしくな?
クゥ―」
クゥー「くぅうううううううう!!」
喜びのあまり、力を使ったのか、羽を大きく、大きく拡げ、天を舞い出した。
それは光の粒を舞わせ、立ち所に、元からそうであったかのように、噴出するようになった。
精霊界内の石、海全てが、その光の力を宿し、辺りに光が在り続ける事態にまでなったのだ…
国王「ああ…
ああ……!!
息子よ…!
ナバラの神よ!!
伝えたい光景とは!!
これのことだったのだな!!
済まない…!!
済まないっ!!(歯噛み、涙)
老い先短い私こそが行くべきであったのに…本当に、済まない!!!
お前にも…お前にも…この、光景を…!!!
あああああああああああああ!!!!!」
その場に跪き、泣き崩れる有様に、
エルはそっと背に手を添え、撫で、共に泣いていた。
互いを強く、抱き締め合いながら…
今は亡き…最愛の人を想って……
それに…ケイトは涙を浮かべていた。
僕もまた、その背に左手を添え、顔を上げて僕の顔を見やるケイトに
微笑み掛けた。
フィン「ん」両腕を拡げる
ケイト「っ…」涙目
だきぃっ!!
有無も言わさず抱き着くそれに、
僕もまた抱き返し、優しく背を撫で、あやすように叩き続けた…