第76章 冒険者依頼(クエスト)、来訪
ムー連邦の国旗は、水の球(始祖神の涙)と、その下に卵が描かれている。
その卵は、神卵(しんらん)と呼ばれ、世界の最初から存在し続けているらしい。
が、未だかつて、一人として孵った所を見ていないらしい。
伝承によれば…正しい相手、黒い蛇を踏んで守った女神に渡せば孵るらしいが……。
うん……
そう言えば、あのリヴァイアサンの亜種は真っ黒な蛇みたいだったね
ということは…(ちらっ)←ケイトを見やる
……恐らくだが…ケイトが受け取れば、その後に孵るのだろう
帰り際に争い合うとは思いも寄らなかったが…
だが、国王から直々に止められ、卵に手を触れるように促された。
国王「真の持ち主に値するものならば、孵るはずだ…
我々は幾度となく、触れてきた。
だが、孵らなかった…
やはり、伝承通り、かの女神でなければ無理なのだろう…
さあ…お手を。
試すようで悪いが、どうか。‥どうか、エルの意を汲んでやってはくれまいか?」
跪き、首を垂れ、懇願された。
ここまでされたら…試さざるを得ない。
気が済むのなら、と軽く頷き、いいよね?と僕を見やる。
勿論頷いた。
その対応に、家臣たちも黙る外なくなったようだ。
エルは満足げに頷いている…
オルガナ、君もか…;(苦笑)
ケイト「……」
始祖神の涙が浮いて安置している台、その前に移動する
周りが見守る中…足音だけが響く。とても静かだった。
すっ
僅かにだが震えた手を、恐る恐る差し伸ばす
ケイト「…」ごくり
国王「そう緊張せずともよい…
始祖神の涙が受け入れた存在は、卵もまた受け入れる。
要は、孵るか、孵らないか、だ。
孵るということは、主として認めた証なのだからな」くす
きっと孵るだろう
そう確信しているのが、見て取れた。
その中…数瞬、間を置いて…ケイトが、卵に触れた。
すると…途端に、光が満ち溢れた。
目も開けていられない程の強烈な光が辺りを立ち込め、
建物内に限らず、深海の精霊界一帯に渡るまで、光は弱まることも無く伝搬した。
結界は無事だ…
光が精霊界内に立ち込める中、それを確認した後…
ケイトの前に…始祖神の涙の中に光全てが集い……
ピシ
ピシシッ
始祖神の涙の中に卵状に集った光が、形を成した。
と、共に…ヒビが入り、今にも割れんとしていた。