第74章 融和
ケイト「守りたいって想いは…悪じゃないだろ?」
ベリアル「ああ。
だが、お前は、ちゃんと、今後のことも考えた上で、現実に落とし込める提案をした。
お陰で…この世界は無事、現在も存在し続けている。
この光景を見ろ」
ベリアルが指差す先は、変わらず生活を続ける皆…
ただし…彼等彼女等のみの記憶は全て無く、歴史にも何にも残されてはいない
いたことによる影響も実害も全て虚無に帰し、平穏無事な日常を笑って過ごせている
消えたからこそ――だ
消えなければ
いつ暴走するか、実害が振り撒かれるか、わかったものではない
いつ来るかもわからないそれに、常に怯え続ける現状だったのだから…
ベリアル「…彼はどうだ?
周りに迷惑が掛からないよう、ちゃんと考えてから、十全に備えてやったか?
その行動で、死なないべき人が死んだと知った時、知らないとしても、その責任を感じたか?取ったか?背負ったか?
先を考えず、大事に想わず、間違いを指摘されたとしても、仕方なかった、正しいと主張し、否定し、正当化するだけ。
そんな人物が、どう変わる?
あなたの為の人生ではないと、守りたいもの以外にはやりたい放題する。
それだけだ。
お前達の言う『癌への認識』は、まず大前提から間違っている(淡々)
あれに他を慮る心等ない
心を持たない欠陥品だ」
『……………』
ケイト「そんな……こと、は」
ベリアル「周囲に目を向けられたとして…
自らが実害を負わせた被害者らに、彼等彼女等がどういった目を向けた?
自分が被害者です、といった目しか向けなかっただろう?
被害者だから被害者を出してもいい
その考え自体が浅はかであり浅慮だと言うのだ
欠けているのは…『他を見る心』というものだ」
『……』
その言葉に…ケイト以外は、深く深く頷いた。
納得した、と同時に
これまでの彼の言動全てに説明がついてしまった…
が…ケイトは……
多分、それでも、飲み込み切れないだろう…
ケイト「……お前は何も悪くねえよ…
そう…言ってやりたかった(ぽつり)
(ぽとっ)
守ることには、守りたいと想い願うことに…罪は無いって…‥
守りたかった…だけだろ
私と…同じで……っ」ひっく
ベリアル「その為に、それだけの為に、巻き込まれて死ぬ他を見ないこと
そこに罪が発生するのだ」