第74章 融和
そこを見極めて初めて、ちゃんと見ている、とも言えるのだろう…
その実、彼等(癌の魂)は天秤を壊しているつもりが…
守りたいものと、それ以外とを、『常に』天秤にかけている
そして守りたいものだけを取り、それ以外を全て厭わない=蔑ろにしている
守りたいものを常に優先し、
ファミリアの皆に迷惑が掛かると心配し、『本来傷付かざるべきだった人々と街』への心配はしない
守りたいから、守る為だけに、他を直接的に傷付けて回る
街を滅茶苦茶にして回り、自らの力で居合わせただけの存在を傷付けて回ったとして、正しいと思える
正確には、間違いだとは思いたくないだけなのかもしれない
たとえ――間接的に殺しが実現する、害悪の立役者になったとしても
「守りたいものを守ること」のみを最念頭に置き、全てを蔑ろにし「食い物にする」、それが「癌」だ。
要は…直接的かつ一方的に、堂々と、「一般市民と街を傷付けて壊して回り「実害を振り撒く」」、「懲りも悔いもせず「繰り返す」」、「治安組織から「処罰を受けない」」、「その上で「正しい」と思っている」
全て当てはまれば、所属する全世界ごと問答無用で消される「癌の魂」となる
巻き込むべき人かどうかの見極めも、取捨選択もせず、手当たり次第にする。
それでは減りようもない。
懲りもせず続けば、取り返しのつかないことになるのは自明の理…
自分にとってが全て、と、
他を見なくなること、境界線を引けなくなること
そこもまた問題なのかもしれない…
魂が消されるというのは
魂が存在した歴史、過去に至るまで消されるということ
つまり、魂を持って生まれていた霊体、人格を模す生命体、すなわち人間
過去に生きていた人間、前世や前々世も込みで人間を時空間ごと消されて、『元から存在していなかった世界になる』ということらしい
で、その誤差を無くす、帳尻を合わせる役割を、世界神様と時空神様がやって下さっている
もし仮に、救うことに成功したとして…
どう転んだとしても、あれが生存してしまえば…
共倒れで終わる
そうなれば――どうする?
僕の答えは決まっている…
彼女だけは死んでも守る、アルもディも勿論…
だが、そんな答えはケイトもまた持っているだろう……
一体…どうやって助ける気だ?
あんな救いようもない魂を――