第70章 新天地
そう神殿での約定に、此度の出来事を記された。
神像は、王と民の『誓いの象徴』でもあり、『想いの結晶』なのだとも。
そして感謝が綴られていた。
多大な…本当に多大な感謝を…
それにしても…流石神殿長、校長(3250ページ参照)の同期だ。
昔ながらの『竹馬の友』と言っていたが、まさか…
これほどまでとは思わなかった。
言葉の説得力が違う。重みも…
ケイトは…「力を貸してくれ」と決して言わない。だから皆、余計力を少しでも貸そうと奮闘する。
何も言わず、何も求めず、たった一人で向かってしまう。
――何かせずにはいられない
理由は単純明快…
危険に巻き込むまいという配慮、想いあってのもの、たった一人で危険に向かおうとする。
そもそも最初から巻き込まない。少しでも命の危機に晒されないようにと遠ざける始末…
だが考えて欲しい。
ケイトを大事に想う人からすれば気が気ではない。
いつたった一人で手の届かない遠く(あの世)へ行くか心配で堪らない。
力ある人であっても、力ない人であっても、差別なく、力を求めない。
己より力ある人であってもだ。
だから…余計、力を貸そうと躍起になってしまう。
本人のつもりはわかっている。
ただ、危険の及ばない所で幸せに過ごしていて欲しいだけ。
人へ力を求めることは、自分の為に命を死の危機に晒してくれと頼むことと同義。
どんなに力あるものでも、どんなものでも、死ぬ時は死ぬ。
少しでも、ほんの僅かであっても、死期を早めて欲しくない…
だからこそなのだと…
だが無理だ。
耐えられない。
それで死なせてしまえば、こちらの心情はどうなるかぐらい考えて欲しい。
そしてケイトの思うそれは、己にも言えた話なのだと…わかっていても止められないのはわかってる。
だから何度も歩み寄って、何度も怒って、ようやっと相談してから行くようになってくれた。
いや本当に…あの終末神の時、我が身も顧みず、構わずに飛び出していっていたらどうなることかと…
僕等がいたからこそ回収できた訳だし…まあ終わった話だが……
諦めない限り…動き続けるのをやめない限り、道は必ず拓かれる。
それを教わった。
救いのない存在などない…
彼女はそう思いたかった、彼の存在を知るまでは…
しかしそれをも原動力として邁進してゆくだろう。