第70章 新天地

神官「…つまり、そういう行動を取る人は、嫌とわかっていてやっているんだ。


その場その時だけの偽りの優しさで、気持ちだけを伝えて信頼を得、己の都合でだけ利用し、
その人の気持ちや都合を一切気に掛けていないことをひた隠しにし、己だけが人を犠牲にして笑える

「自分のこと」しか頭にない人間だ。


だが…その背景に、原動力となるものが虐待や抱える闇があれば、それは別だ。

やり場のない怒り、闇、それらを少しでも吐き出したいのだろう…
だが覚えておくといい。

それをしている時は、己が、その闇を与えてきた人間と同じになっていることを。


それを重く見て、繰り返すまいと努めるか、当たったものにかつての己を重ね、常にものにも人にも優しく在ろうとするか…
そこが、己が優しい人間か、そうでない人間か、その「線引き」となり、初めて見分けがつくのだよ。

分別も聞き訳もない、素直さを無くし、己だけは悪いことではないと、罪を頑なに認めない人間は…明らかに後者だ」


「なるほど…身勝手って奴ね！」

神官「ああ。
自分よがりとも言う。己しか見えていない、考えていないんだ…

だが、これだけははっきりさせておきたい…


人間的な、最低限の常識として、人のものを壊したり、殺したり、傷付けたり…
誰がどう見ても器物損壊罪、殺人罪、暴行罪をしていながら、常習犯でありながら…
意に介さず、繰り返すまいとしない時点で、最小限にしようと慮りもしていない時点で、それをした本人は、人のことをそれほど気に掛けてない。

人の気持ちが頭にないから、他人のことだから、どうでもいいから簡単に出来てしまうんだ。

その場合は、「自分のことしか頭にない」、人よりも自分へ優しいだけ。


己の感情を重んじるだけ、他の感情がさほど重くないから考えない。

たとえ優しく見えたとして…
それは、見せかけだけの優しさを笠に着た、周りにいい人だと言わせて罪を罪とさせない、偽りの善人に過ぎない。

優しい人物ではない。関われば往々にして搾取されるだけだから気を付けろ。



もし仮に…

己が加害者に正当防衛し、その原動力が底知れない闇だったという背景を知り、
その上で逮捕され、大丈夫かなとその身を案じたとして、


それが善人とは限らない」

「えー？何で？」

どういうことかわからないようで首を傾げている。