第70章 新天地
事実は違うのに、それを事実とすることで傷付け、
ただ自らの感覚の為、実物ではないと存在そのものを否定したいだけ。
傷付けてでも感覚を信じ、事実を捻じ曲げている自覚もなく、悪いことをしたと思いたくないだけ。
そんな人は、ほっとくしかない…
本当のケイトは…そんな人ではないことぐらい、見る目がある人には、
実際に窮地を、苦楽を共にした仲(実母と姉)では、否が応でもわかる。
人格も、感情も、その存在すら許されず、全てを無下にされてでも、10年間(リアルでは24年間)され続ける中でも貫くと決めた、何よりも重い『誓い』であると同時に、生涯貫き続けると決めた『生き方』なのだと…
イケメンになろうとしているのでもなく、カッコつけたいのでもなく、ただ…そう誓ったのだと……
せめて、自分がされて傷を負ってきたことを、その想いをさせたくない一心であり…慮ってのことであり、偽りない本心だと……
人の為なら、自分を迷いなく殺してみせる。自分の全てを投げ出してみせる。
そこには何ら他意はなく、ただ…只管に、同じ苦痛を味合わせないこと。
与える人間と、同類とならないことを、何よりの信念としていた。
信条とした結果、それが仇となる…
周りに好きにされ、往々にやりたい放題とされ続けている。
その為に、僕等がいる!
彼女が「自分の為」にやれるのは、自己防衛と、傷付けないよう迎撃することのみ。
出来ない部分を補う為、自らのみの為では動けない彼女の為、君を必ず守ると、その為に生きると決めた。
今でこそ、大事に出来る。
「何も知らないくせに…!」
ケイト「事情は知らないよ…でも、だからって……
何でもしていい訳がないだろ!!!!!」
人を止める時…ケイトは人へ意図的に傷付けたことが皆無なことを噯にも出さない…
守ろうとしてばかり…
君が真に悲鳴を上げているのは…
君と同じように
痛め付けられて、苦しませられて、それでも力を貸す対象として見られていること。
それによる痛み、辛苦、それらがわかるからこそ…悲鳴を上げているんだ。
君のそれは…ネチこい指摘でもなければ、私怨に重ねての怨嗟でもない。
それが現実として在り続けてしまっていること、『他者の苦痛の存在』への慟哭だ。
そこもまたケイト自身気付かなかったようで瞠目していた。