第69章 文明開化
本来ならば性別もわからない妊娠15週目の胎児だった赤子を2800gの新生児にまで成長させた後、エレナの方を見た時には既に事切れていた。
蘇生させようと試みたが、無理だったのだ…
意識がないながらに必死に何とかしようとしたケイトは、全てを出し尽くした後、昏睡状態に陥った。
エレナも傷までは治り切っていた。
が…体が持たなかったのだ。血もちゃんと雲属性の増殖で造血できていた。
出来る限りの手は全て尽くして、それでもダメだったのだ…
昏睡していてよかったとも思える…
昏睡していなければ、きっと無理をしてでも
自分が取り返しの無いことになってでも、己を犠牲にしてでも治そうとしていただろうから…
たった一人の親友なのだから、と……
初代の子供が生きていることを知らせたが…
反応は乏しく、それ以上に心身を病ませていることに気付いた。
ボーとしていることが増えたようにも感じる。
ケイト「デイモン…大丈夫かな」ぽつり
気落ちしてないといいけれど、と…
デイモンや僕や赤子のことばかりで、初代のことは全くと言っていいほど話に触れられなかった。
まるで…見限った存在であるかのように、触れられたくない存在のように……
実際そうなんだろう…
エレナから妊娠していることを明かされたのは、会議の後のことだが…
妊娠以外の理由で動けないものも基地にはいる。
怪我人、病人…それも程度の深いものばかりが療養に専念する為に残り、不用意にすぐ動けずにいる者達ばかりだ……
そんな戦えないものをも蔑ろにする愚行、命令を下した。
力無いもの、大事な人から順に殺されてしまうと危惧し、あれほど危険性を示してもなお、だ。
守れると過信したか、こちらの方が強いし何とかできると思い上がったが故か、今となってはもうどうでもいい…
死ぬように仕向ける命令を下しても、あれほど糾弾を受けても、あの態度なのだから…
殺した後、必要なことだった、で流した頃と…何ら変わって等いないことがよくわかった……
その時点で、もう弟として見ることをやめたのだろう。
他人として見、距離を置き、二度と…信頼するものとしては見ない。
そう決めたことを伝えられた。
『彼は最早人間ではない』、と――