第69章 文明開化
そのことが非常に嬉しかった…
と同時に…僕にとっても救いとなった。
彼女から、私にとっては何よりの救いだったと言われたが…
逆だった。
それ以上に…力になれたこと、惚れた女を、家族を…やっと守れたことが嬉しかった。
両親と似た、己の身を犠牲にしてでも他の幸福を願う。
そんな勇気ある同族と出会えたこと、それこそが僥倖であり…
胸躍らされた。
そう当時の心境を思い返し、顔がほころび、頬を緩ませ、自然と笑みが浮かぶ。
フィン「ケイト…君も成長してくれ…
鞘の心を持ったまま…
辛く、苦しい道のりだろうが…僕が支え、供にしよう」
ケイトの両腕により密着させられたまま…
瞑目し、微笑し、そう想いを馳せながら、彼女の額に僕の額を重ねた。
が
ケイト「後ろダメ、となり」むにょむにょ
フィン「!」
供に、には…後ろについていくという意味合いもある。
どこまでもついていくという意味合いで言ったのだが…やはり、言葉というものは難しい。
懇切丁寧に伝えると…安心したように破顔し、幸せそうに寝息を立て出した。
起きているのだろうか…?;
そう思い、ついついと頬を指でつつくが、全く反応せず…
僕も僕で、唇を重ねたまま、ケイトの温もりを堪能した。
全くもって邪気も邪念もなく、純粋過ぎる。
何故だろうか…心が洗われるような不思議な感覚に包まれるのは……
空気も澄んでいて、穏やかに感じる…
だからこそなのだろうか…
このまま自然に溶け込み帰依したいとさえ思いそうになるのは……
世界樹のお陰もあるのかもしれない…
ケイトが実母と龍神の実子なのは全世界共通らしい。
半神半人のはずが人、こちらでは小人族として生を受けた。
それも相まってか霊感は歴代一強い。
今、お腹に『精霊王の半身』を継ぐ子、ウルがいる。
霊感を持つほど純粋で素直な『後継』となる子だ。それを宿した状態なのだから、なお一層霊感も強まっている。
生まれたばかりは誰もがあの世との繋がりが強く、霊感を持つ。
だが…欲に溺れる内この世が近しくなり、損なわれていく。
他をどうしてでも己さえよければと、我欲が強まれば強まるほど、あの世から離れ、穢れ落ちてゆく。
欲に溺れるほど、滑稽なほどに…
神様との約束もあって、持たされた霊感が本質をまざまざと見せつける。