第11章 雪と真相
ロキ「でもなあ…今はもう、それやないんや。
そやから、その傷付けてきた奴等のことはもう忘れや?
忘れんと、心の取り戻した今は耐えられん。
外見も声も、街の不快感をもたらす輩のそれは全部忘れて…
それでもされた嫌なことだけ覚えといて、人を傷付けない動力源にし。
自分で考えて、頑張って進んでいき」
ケイト「……うん。
そうだね…イメージが抽象的だと、心も落ち着いていられる。
実際にその当時のそれが現実みたいにフラッシュバックするようなものより、圧倒的にマシだ」
ロキ「そやろ?それが受け流しのコツや。
ケイトに合った流し方、精神的な傷の捉え方、全部…生きていく上で必要なものや。
飲み込まれなや。目の前の光から、目を逸らさんといてや。
うちらは…絶対、見捨てんからな」ぎゅうっ
ケイト「っ…何で、そんなこと言うんだよ。
フィンも…ロキも…私に肩入れし過ぎだよ。
過大評価し過ぎなんだよ。何で、【経験値】になってんだよ」
ロキ「何で蘇生しただけで上がったかか?
それはなあ…お前を殺そうとした人達を、蘇生させたからや。
必死に護って、戦って、絶望の中でも狂わずに頑張り続けて…
ほんで全員護り抜いた。100人纏めて救った。街まで全部直した。
並の人間には…憎しみや恨み辛みが重なって絶対できん。そやからや。
フィン達もわかっとる。皆もわかっとる。
オッタルのあれもそうや。龍を目覚めさせた。
誰かにコツも教わらないまま、土壇場で限界を超えて自力で目覚めさせた。
誰かに頼らず、冒険をした。超えた。勝った。
死力を尽くした死闘の果てに、目覚めを掴み取り、勝ち取った。
そやからなあ…そんなに過小評価するんはやめ?」
ぽろっ
ロキ「…お前を苦しめるだけや。
それに、言っとるお前自身が…一番辛いやろ」ぽんぽんっ
震えながら歯を食いしばる中、涙が頬を伝って落ちていった。
事実、ロキの言うことはその通りだった。
傷は何度も疼く。自分を見捨てろと疼く。
自分を殺せと喚く。自分などいない方がいいと叫ぶ。
人を傷付けたくないというエゴ、街の人達と同じになってしまったのでないかという恐怖。
オッタルを傷付けてまで倒したそれに、やむを得なかったとはいえ怖かった。
苦しかった。同じになるぐらいなら死んだ方がという悩みが、余計に自分を苦しめていた。