第65章 新たな冒険
見合うだけの実力を身に付けないと気が狂いそうになる。このままじゃ恩に報いれない、力に等なれやしないと居ても立っても居られなくなる。
これは…私自身の在りたい形なんだろう…
彼が悪いことや悪事を為してる訳ではない。
だが…他力本願で大した努力をせずとも都合よく、本人の願いばかり成就している。
その裏では必ず、成就していない側が不利益を被っている。何らかの望みや経緯があったそれを踏みにじっているという自覚に欠けている。
知らず知らずの内に、恨みは付き纏う。
殊更…親を殺された死も、全てに絶望した経験も、いつでもどこにも聞いてくれる者も助ける者も誰もいない絶望も『知らない希望』が、強いということになっている時点で「ふざけるな!」「絶望や希望をお前が語るな!」以外感じない。
それを乗り越えた希望こそが真に強い!それを無下にされているように感じて極めて赦せん!!!!馬鹿にするな!!!殺してやる!!』
だんっ!!!!
ふーっ!ふーっ!!
逆鱗に触れ荒れ狂う闇に対し、闇と共に跪き地面に左拳を突き立てた。
殴り付けたというのに一切揺れず…跡も残らないように…
たとえ物であろうと…同じ想いはさせたくない。痛みは与えたくないと…
震えながら…涙が落ちた……
数十秒程深呼吸した後、ごめんと…左拳を突き立てた地面を撫で、そこにぽとぽとと涙を落としながら立ち上がった。
『乗り越えて…必死に…自分の中に収めてきたのですね。
自分のみに当たり続けた。怒る己に、負の念に飲まれる自分に。
それにより…あなたの精神は図らずも守られた。
苦労してきたのが…必死に乗り越えたのが馬鹿みたいに感じる。だから腹が立つのも余計でしょう』
ケイト『涙拭う)同じように想い、憎む人も多いだろう。
未来から帰ってきてからは全く修業をしていない。せずとも、周りが勝手に動いて強化した武器を貰い振るって倒して終わり。
最後はさっき言った通り。
与えられるまま享受するばかりでは…強くはなれない。
まだそれ以上の強い敵が出てこない内はいい。だが、出てくれば必ず後手に回る。すぐ殺されれば終わりだ。
それだけじゃない。
それまで死に物狂いで努力し続けてきた人達の想いはどうなる?
辿り着けなかった人達を嘲笑うように追い抜き修業も全くせず強くなる、その存在は言わば…怨み辛みしか抱かれない』