第59章 承継人
ケイト「傷付けるのは、壊すのは、簡単にできてしまう…
でも…守ることや、救うことは…簡単にはできない。
無限大に頑張ったとして……得たものは…
それ以上の…ひどい暴言と暴力だったよ。
馬の耳に念仏、決して聞き入れない輩だった…全てが……
でも…それでいいんだ…
他人の荷まで、背負うことは無いんだ…
背負おうとした、力になりたかった…
その道の先は危ないって…地獄を見るって教えたかった、伝えたかった…
何より…――助けたかった」
ぽとっ
零れ落ちる涙は…無念だと訴えかけているようにも見えた。
何も出来なかったという「自責」のそれもあるようにも…
ケイト「どれだけわかって欲しくても……
「その川の先は滝壺だ、危ない!」
って伝えた所で、しつこく噛み砕いて伝えた所で…うっとおしいだけだもんなあ…
実際…全部、悪いようにとられて、逆に傷付けられもした、攻撃されもした。
馬鹿にしている、下に見ている、ただの悪口、そう受け取られて、本人のつもりも聞きもせず決め付けられて、逆に痛め付けられた…
でも…あれで…よかったんだ……
感性と人柄、個人からの主観…全部が違うからこそ起こっていることだから。
親切のつもりでも、あいつらにとっては迷惑でしかなくて…不条理でしかなかったんだろうなあ……
自由にさせろって…
それで自由にやり続けた結果、痛い目を遭わせなきゃならなくなる。
閻魔様の役割をする神様がそれまでの罪を精算し、審判を下す。
罪を洗う為の地獄落ちという道へ…
その為に生まれて、生きて得る学びよりも…死んでから得させる学びまで込みで、神様は生まれ変わらせていた」
その時、天界の神からケイトへ語り掛ける声が僕達の頭にまで響いた。
『それは少し違うよ』
ケイト「あれ?違う?」
『その罪を死後まで背負うかは、本人次第』
ケイト「本人次第…?
ああ、だからその罪に巻き込まれる形で彼を擁護する周囲も地獄に落ちたんだ…
もう…仕方がないことなのか…?」
『どうにもならないよ…
本人にその気がないのなら
その言動を取ったことに罪の意識も苛まれないのなら…
どちらにせよ、誰が何をしても、同じこと(地獄落ち)に陥る。
気にするだけ無駄』
そう断言する神は、いずれにせよ地獄落ちと伝えてきた。