第59章 承継人
胡坐をかきながら頬杖を突き、けっ!と溜息を零した。
椿「だが…そんなあやつが好きだった。
あいつだからこそ、手前は救われた。
親身になって寄り添い、敵味方の区別なく一つの命として接する。
たとえ生き方が理解できなくとも、別個の在り方として受け止め、受け入れる。
そして――何においても、手前のことを念頭に置いてくれた
一人前の鍛冶師として成長するまで……
魔剣をも超えた武器…『神器』を作れる今の姿を、あやつに見せたかった。
殺しとは…あるはずだった未来も奪ってしまう。
願ってやまなかった希望すらも断ち切ってしまう。
だからこそ……重みが生じる。
一つの命を頂くにも、殺すにも、傷付けるにも…その全てが……」
風が優しく吹き、撫ぜる中…
お父さん(ヴェルフィン)が、優しく寄り添い…撫でてくれたように感じた。
それは椿も同じようで、ふっと笑みを浮かべた。
椿「たとえ何であっても…粗末にしてよいものではない。
そう…あやつに教わった(ジョッキの中で揺れる水を見る)
本当に…お主に似て、穏やかで…優しい…いい奴だった←ケイトを見やり笑みを浮かべる
まあ…何が言いたいかと言うと……
生きる上において…何かしら悩みがあるのは普通のこと。
決して避けられはしない。
皆、何かしら抱えて生きておる。
お主も…劣悪な環境にありながら、激情に身を任せず踏み止まっておる。
殺そうと思えば誰でも簡単にできる。幼児でも誰でも、刃物を持てばできてしまう。
だがお主は踏み止まった。
相手の為、感情の為、得るだろう傷の為…
それができておる時点で、お主は優しい。お主が嫌うあの大馬鹿者よりも遥かに重みが違う。
あの馬鹿の得た傷、殺すに至った激情…それらは非常に軽い。
悩みが無い状態を、常に周囲からお膳立てされ続け…
あれほど支えられ続け、甘え続け…それらが普通?平穏?
一体どれほどの人を犠牲にし続けるつもりじゃ!(激怒&真剣)
常人が周囲から持ち上げられて、流されるだけ流されて終わりじゃろ?
親しい者の死も、自らの死を望む程の絶望すらも知らぬ。
そんな奴の語る希望など…何の意味がある?
あんな口先だけの軽い言葉になぞ…言動なぞ、何にも響かぬわ!
ましてや救いなど、そんな先になどありはしない!!」真剣