第56章 プール大会
ケイト「なにがなんだか、もうわからないっっ」ひっく
ぽんぽん
なでなで…
未だ、そう泣きじゃくるケイトの頭を僕はそっと軽く叩いた。
そして僕の方を向いた時、そっと頭を撫でながら…微笑みかけながら…幼い子をあやすように言い放った。
フィン「ケイト…頑張ったね」
ケイト「うん…頑張った…;」ぽつり
フィン「よく、あんなにされても…同じ人に成り下がらなかったね」なでなで
ケイト「愛してるから…大事だから…
ちゃんと…私のことを想ってくれてたこと、わかってたから……
だから…頑張れたっ」ぼろぼろ
フィン「偉いよ。
誰にも誉められず、認められない中でも…十分過ぎるぐらい頑張った(ぎゅっ)←再び抱き締める
君は…優しいよ、どこまでも…誰よりも……
ちゃんと見てるから、ヴェルフィンもオリヴァもシルキーも…
霊になっても、上から見ててくれているから……」
ケイト「知ってる…だから……」
フィン「ああ…」
ケイト&フィン『死なないでっ!&死なない』
ケイト「ひっく、うえっ;;」ぼろぼろ号泣
フィン「大丈夫だ…ちゃんと、通じているよ。
君の言いたいことも、胸に巣食う想いも…
断腸の思いで、やり返すまいとしたことも……」
なでなで
背と頭を撫でると、余計に涙が零れ落ちていった。
それからは…只管泣きじゃくるケイトを宥め続けた。
人の死を味わいたくない、自分のせいで誰かが傷付いて欲しくない。
ましてや死ぬとなればそれ以上に…
その想いをぶつけるように、言葉では表現し切れない想いを伝える為に…彼女は泣いた。
赤子のようにただただ泣きじゃくり続けた、咽び泣き続けた。
アルやディが起きてくるまで彼女は泣き続け…
やがて何事も無かったかのように晩御飯を作って食べさせてくれた。
泣き続けている中、僕は何も言わずに抱き締め、受け入れ、只管頭と背を撫で続けた。
それを始終見守っていた晴れた夜空と月は…期せずして、彼女が生まれた時と同じだったという…
泣き止んだばかりか、まるで無かったように接するという変化の理由を尋ねた所
彼女は一言返した――「スッキリした」、と。
それに僕は苦笑を返し、いつものようにそっと抱き締め合った…
その表情はどちらも晴れ晴れとしており、幸せそうに笑みを浮かべていた。