第1章 出会い
3日3晩――
それは、意識を取り戻してから走り続けた時間だ。
私の住んでいた街には、数千匹ものモンスターが襲ってきたらしい。
らしいと言うのは、この街に着いてから知った情報だからだ。
ここはオラリオ。
世界で唯一「迷宮(ダンジョン)」が存在する都市。
神々の多くがここに居を構えているそうだ。
ここはあまりにも人口が多く、魔石を得る為に迷宮に潜る冒険者が多い。
その冒険者は神の恩恵(ファルナ)を受けることにより、成長が普通よりも早くなるらしい。
ざわざわと騒がしい中…不思議と精霊の声を感じる。
精霊と言っても、なんとなく導いてくれる存在のようだ。
目には見えなくてもうっすらと感じられる程度のもので、四大元素はもちろん雷や光や闇、時空間まで自在に操れるらしい。
他の人には見えないようで、独り言になってしまうから声には出さないようにしてる。
心の中で思ってるだけで通じ合うっていうのは意外と楽だ。
ギルドという所に行けばいいらしい。
いきなり走るのを強要されたかと思えば、何故に歩くことになるのか…;(汗)
私が意識を取り戻してからの最初の記憶は
――逃げてっ
――お願い、逃げて!
そんな悲痛な叫び声と共に、風が私を引っ張ったことだった。
雷や風まで駆使して無理やり走らせ続けられていたこともあってか…
歩いている今も、走っているんじゃないかと錯覚しそうになる自分がいる。
そうしてギルドに辿り着いた後、ようやく精霊の動かそうとする力が無くなった。
それに安心して近場の椅子に腰かけて天を仰いだ。
「は~…疲れた」
言い遅れたが、私の名は…ケイト・グレイロア。というらしい。
何故か記憶を無くした状態から、この物語は始まる。