第44章 出産後
自分という存在にとって、乗り越えたが故の証…
そう捉えられるようになるまで、非常に時間がかかった。
何十億年に渡る憎しみや怒りである「始祖神の闇」さえも凌駕するほどに、それは苛烈で…
始祖神の記憶、意思や人格に押し潰されることも、染まることすらも一切なかった。
裏を返せば…それほどまでの恨みや、痛みや苦しみ以外なかったからこそ抱いた「味合わせたくはないという想い」が、それをさせなかったのだと僕は思う。
フィン「ケイト…結構苛烈な処刑をしたわけれだけれど、まだ許せないかい?」
ケイト「ん!」こっくり
フィン「…;」
ケイト「でも…」
フィン「ん?」
ケイト「…やっぱり…幸せになって欲しい」ぼそ
フィン「……・・
…底抜けのお人好しだね、君は」瞑目&嘆息
ケイト「…それが私だ」
フィン「!」瞠目
ケイト「私自身の…意思だ」真剣
フィン「…そのままでいいよ。
火の粉は僕が払おう。
君という人格が何なのかは、既に知っている。君の半生も、その全てを。
知った風な口を利く輩など捨て置けばいい」
ケイト「フィン…;
なんか、闇が凄く膨れ上がってる;」
フィン「……君が負い目を感じることは無い。
あの者達は赦されないことをした。
法に基づき裁判を経て得た、因果応報だ」
ケイト「…何か…可愛そう」
フィン「君は可愛そうじゃないのかい?」じと目
ケイト「んー…;
基本、自分の痛みはどうでもいいから」
フィン「よくないよ。僕にとっては」
ケイト「そういう人自体、私の「周り」にはいなかったし」
フィン「重ね重ね言うけれど、今は?」
ケイト「違う。
わかってるんだけど…すぐには中々;」しょぼん←肩落とす
フィン「…長年続いたんだ、仕方ない。
ただ…今はもう、そんな環境とは違う。
第一に…僕達が、そんなことを罷り通させない。
君の居場所であり、家族(仲間)(ファミリア)であり、職場でもあるわけだからね。
それを害する者…傷付ける者がいれば、動くさ。
それがたとえ、たった一人の団員であったとしてもね」
ケイト「…そうだね。私も…その時はじっとしていられないと思う」
フィン「…腰を据えて話をするまでもないね、この話題は」苦笑&嘆息
嘆息を零した後、瞑目しながらさり気無くケイトの背に腕を回し、僕の方へと抱き寄せた。