第44章 出産後
ケイト「もっと…もっと、触れたい」
理解など、得られるはずがないと思っていた――
環境が違う、あの痛みや苦しみなど他は知らない。
知るはずも無ければ、わかるはずもない…どうせまた――悪人だと決め付けられるのだから……
決め付け、先入観を植え付け、近付かないよう唆し、洗脳し、喚き、叫び…
自らの意見は受け付けず、聞かず、聞こうともせず、尋ねず、向き合おうともせずに続ける……
その上で自分は悪くない、悪いことはしていないと主張する。
それらの行為の結果、それを否定できない環境に加え、生まれ持った障害を抱えたケイトにとっては
孤立させ、独りとさせ続けるという現状へと追い込んだ「元凶」に他ならなかったのだから……
大切な存在を奪ったのは人だった。
時間も、理解も、得られるはずだった可能性も、何もかもが…
自らに関わる「人」、周囲の「人」という存在が率先して奪ってきた。
失う悲しみや苦しみを得て欲しくはないという想いは、誰であっても抱いてしまうのだが
いじめっ子や父のような自己中心的な人間に対してのみ、「殺してやりたい」以外の認識など一つとしてない。
関わっている時にしてきた行為しか知らないのだから仕方ないのだろうけれど…
それらが…ケイトの抱く「人自体への認識」だった。
頭では、わかっていた。
たとえ目の前のそれが何であれ、そういう人ばかりではないのだと…
そう思いたかった――
思えなかった。
目の前の現実は、違うのだと強く何度でも訴えかけてきた。
いくら何を想おうと、関わることで痛みや苦しみを与えるくらいならと無干渉を取ろうと、相手はひたすらにそうし続けてきた。
やりたいようにやり、耳も傾けず、疑問にも思わず…そのような人など、誰一人としても居なかった。
目の前で関わろうとしてくる人達が、それによる痛みや苦しみは、それを認めさせてはくれなかった。
だったらそれまでの痛みは!苦しみは!何だったんだよ!!?
産まれてくる環境も選べない、産まれ持った障害もある、理解も得られない。
拒絶されて!否定されて!罵られて!!いない存在として笑って…(涙)
好き放題して……
その挙句、こちらのそれは何でもかんでもダメだといったくせ…自分のそれは全部間違ってないって言う。