第35章 成長
ケイト「無くすかも…しれない……
それほどに…力を、吸い取られ…て……魔力が、特に…それで、魔法が使えなくっ」
ぜえぜえと息が薄れ、荒れ、耐え切れずに瞼を弱々しく閉じるその弱り切った姿に…
僕は、見ていられなかった。
想起されたのは…両親の死骸、死ぬ直前の様子だった。
耐えられないとばかりに、僕の身体は自然と動いた。
18時、精霊の森アルルェーチェへ移動しようと連れ出そうとした。
ギルドへ外出届を出し、行こうとしかけた。
しかし、その時…
『やむを得んか』
一つの声と共に、精霊王らしき人物がやってきた。
もし話さなければ怒鳴り込みに来るつもりだったとのこと。
精霊王「急激な変動に身体がついてこれておらん。確かに…これは危険じゃの。
どれ」
ぽおおっ
ケイト「うぅっ;」
フィン「ケイト!」
顔を顰め、魘されるケイトに、僕はその手を取って握り締めた。
左腕前腕部の中間あたりを右手で掴み、太陽のような形をしたあざが刻み込まれた。
凄まじい魔力の渦が見ただけで感じさせられた。
《精霊王の祝福》というものがかけられており、今もなお消えかけている《精霊寵愛》の全快を多少なりとも補佐するものだそうだ。
精霊王「それにしてもお主…どうやって行くつもりじゃった?
そもそも森へはわしの許しがなければ来れん」
フィン「…たとえそうだとしても…僕は、彼女の生を諦めたくはない。
たとえ、この先に何が起こったとしても!」
精霊王「ふっ…はっはっはっはっはっ!^^
言いよるわい、わっぱめが(にや)
その心意気に免じて、ケイトを道具代わりに入ろうとした件はお咎めなしとしよう」
フィン「ぎり!)違う!!
僕は…!!」
精霊王「助けるつもりで、それも折り込み済み…覚悟の上だったんじゃろう?
なら…胸を張らんか。
お主の是が非でも辿り着かんという意思を通じて、わしは気付けたんじゃ。
お主は妻を守った!
男として誇るべき、立派な夫じゃ!!」
フィン「!!」
その言葉に…僕は目を見張るばかりだった。
そして…彼女(ケイト)へと目を向けた。