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Unlimited【ダンまち】

第33章 ケイト調査票





・変化


どれだけ傷付けられたとしてもなお、どれほどの罵声を浴びられてもなお…彼女は立った。

その15年という生涯で傷付け続けてきた者達を背にし、石や剣・果ては罵声をもその身に受けた。
それでもなお一切抵抗せぬまま、彼女は敵の目の前に立ちはだかり、戦い抜き、守り抜き、果ては建物や死人ごと蘇らせた。


『馬鹿』『愚行』としか言えない善行、普通ならば仕返しぐらいするだろうに一切しない。

決して自ら関わろうとせず、それでいながらも相手は自分から彼女へ関わり喚き拒絶し否定し傷付け続ける。
それでもなお、彼女は無抵抗を示し続けた。

そのような仕打ちを受けてもなお彼女は戦った。最後の最後まで戦い抜いた。
その命を奪わんとする怪物と――


本物の『英雄譚』を目のあたりにした。

普通ならば死んでしまうだろう出血量、最後に背後から剣を肺を貫通するよう投げ付けられてもなお、決して傷付けようとはしない。
馬鹿にも程があると、僕は思った。常人ならば鼻で笑って馬鹿にするだろう。

それでも…それ以上に熱く焦がされた。身も、心も、魂までもが、ひどく震わされた。
幼かった頃、僕が望んで止まなかった英雄(フィアナ)の姿が、目の前にあった。

剣が刺さった後もなお、彼女は言った。
「モン、スター…どこ?…皆…無事?…だいじょ…ぶ?」と。

どこまでも人を重んじるその態度に、自らを重んじないそれに…気付けば動いていた。


その当時の僕がケイトへ抱く印象にあったのは、不眠不休で3日3晩走り続けた後&恩恵無しにも拘らずLv.6のアイズを倒したこと。凄まじい技量、武を感じたこと。
15歳という若さでありながら、記憶喪失でありながらもなおその圧倒的な実力に、アイズとの戦いの中でありありと見せつけられた『勇気』に、成長が楽しみだと心から想った。

今ここで死んでいい人間ではないと、心から想わされた。



しかし…その時に焼き付けられた。
彼女の馬鹿なまでの優しさを。階層主を蹴散らすその姿を…

眩しく感じた。美しくすらあった。護りたいと強く焦がされ、突き動かされた。


その高潔さを抱く彼女を、どれだけ否定されてもなおそれを守ることを貫く彼女を
高らかな主張で醜く汚そうとする無粋なヘレイオス街の輩から守りたかった。

今思えば、その日が始まりだったのかもしれない…僕と彼女の恋の――


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