第78章 defender
楽屋のドアがいきなり開いて、若干、雑に閉められる。
入ってきたリーダーは俯いたま、足元を見つめてるようだ。
ヘンな雰囲気で挨拶しづらいから、様子見をしようと思った矢先。
泣きそうに、悔しそうに、唇を噛み締めるのが見えて動揺した。
こんなとこ、初めてだ。誰の所為だろうってイヤな気分になる。
それとなく聞き出したいな、なんて口を開きかけて。
丁度、そのときだ。
「やっぱ………俺、いらねぇじゃん」
吐き捨てる乾いた声を、聞いちゃった。聞いてしまった。
ばさり、と読んでいた漫画雑誌が滑り落ちる。ばちり、目線がぶつかる。
この瞬間オレに気付いたあなたは、心底しくじった、という顔をした。
「ぁ、わりぃ。おはよ、相葉ちゃん」
「ちが……違う、謝んないで。悪いこと、してないもん」
おーちゃん、とそっと呼びかける。
オレのが泣きそうで、何だかおかしかった。
あなたが咄嗟に作った笑顔は、こっちから見ると痛ましい。
原因はどいつだろう、と珍しく腹が立ってるのが分かる。
居ても立っても居られず、席を立って足早に近付く。
けど頭がよくないオレだから、何と言えば良いのかが分からない。
でも必要なんだと伝えたくて、ぎゅっと腕の中に閉じ込めた。
身じろぎするリーダーに思わず、安心してほしくなって頭を撫でてしまう。
アレ可笑しいな、とは感じたけども、少しは伝わるかもしれないと思い直す。
あなたがいなきゃ駄目だって。大切な宝物なんだって。
否定するかもしれないけど、オレらにとっては事実なんだ。