第78章 defender
「ねぇ……そんなこと言ってきたのは、どこのひと?」
「何でもねぇってこれくらい。妙なとこ見せちまったな」
「これくらいじゃないよ。もっと酷いのがあるんでしょ?」
表情を隠そうとするリーダーの頬に手をあて、ちょっと強引に視線を合わせる。
いつも通り水分たっぷり、なのに怖いくらい真っ暗な目。
あぁ、あなたもれっきとした人間なんだよなぁ。
そんな当然のことが過った。
オレ達の、オレの、大事なひとをこんなにして。
悲しませるからしないけど、捕まえて××しちゃいたい。
悪くないよ。大丈夫だよ。あなたがいなきゃ楽しくない。
出来るだけ優しく話しかけつつ、今度は背中を摩ってみることにした。
すると体の力を抜いて凭れてきてくれるから、ほんの少し安心したんだ。
「みんな、大好きなんだよ。勿論、オレも大好きだからね」
「ん………俺も大好き。ごめんな、ありがと」
「どういたしまして!今日も二人で頑張ろうね」
リーダーが腰の辺りに腕を回してきて、それからコクリと小さく頷いた。
可愛いなぁ、とつい頬が緩んできちゃう。そうして、こっそり考え始めるんだ。
絶対に犯人を見つけて、それで上の人に言えばイイかな。
うん、だから、覚悟してなよ?
*****
数週間後、あるスタッフが退職届を提出した。
詳らかなことは、誰も知らない。
「あっち、見覚えのないひとだ。新しく入ったのかな」
「そうかもね。何かこの時期って珍しいカンジだねー」
「確かになぁ」