第67章 過ちを文る
side.A
カチャリ、と鍵を閉める。
いつからだっけ?いや、多分、先月とかだろうけど。
二人きりで半日や一日過ごせるときは、彼を自分に繋いでおくことにしたんだ。
そんなバカみたいなこともさせてくれる。
好きに、させてくれる。好きにはなってくれないのに。
大事なひとを大切にしたかった。
そう出来る自分でいたかったんだよ。だのにねぇ。
嫌いならそう言ってくれれば良い。
その口を、塞いでしまうに違いないけどさ。
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「相葉ちゃんなら、いいよ?」
「………うん、ありがと」
細い鎖で繋がれた手を、リーダーはひらひらと振ってみせる。
ジャラジャラと音がして、それにも慣れたと気付いた。
最初は何てことをしたと思った。
でも、そんなマトモな考えはそのときだけ。
こうしておけば、あなたは一緒にいてくれるって。
笑って話しかけるのもオレだけって、心底しあわせ。
「もう、そんな顔すんなよ。相葉ちゃんは悪くないから」
「分かってるよ。だから、こういうコトしてるじゃん」
「ん。お前は、そうしててな」
くしゃりとオレの前髪を撫でて、肩にもたれてくる。
今の感じ好きだなぁって思った。何かほっとする。
オレたちはそういう空気でいられるのに。
今の自分じゃあ、癒しにはならないんだろうなぁ。
誇らしかったけどもういいや、なんて。
あなたを好きなあまり、可笑しくなったのかもしれない。
ちゃんと告白した訳でも無く、フラれた訳でもない。
この恋はきっと、破れることも失うことも無い。
だからこそ、ずっと宙ぶらりんのままだ。
実るかも分からない片想いを、延々と続けられる。
それは、しあわせなのかもしれない。
だなんて、真っ赤な嘘だよね。