第46章 かわいくない
自販機で買ったものを手に、近くのベンチに座る。
何でホットにしちゃうかな。クールダウンしたいのに。
「……ばか、だなぁ」
「相葉ちゃんらしくて、イイんじゃない」
「へ、え?えっ!」
頭上から降ってきた言葉に、思わず顔をあげた。
驚くオレとは反対で、見上げた先には柔らかく微笑む顔。
ふふ、とリーダーが笑んで隣りに座る。
お互いの肩が触れ、その距離すら意識してしまう。
だけど、それはオレだけ。
普通だし、当たり前だ。結局、何でもないこと。
ちょっと、寂しくなっちゃうよね。
「そろそろ戻ろっか。呼びに来てくれたんでしょ」
「そだね……相葉ちゃんはさ、誰でもその顔で見るの?」
「え?変な顔してる?」
「変じゃねぇよ?すっごく、俺の好きな顔してる」
大野さんが、オレを見つめてにっこりと笑んだ。
それから前を向いて歩き出す。
その一瞬の間に、唇を舐めるのが見えた。
ほら、やっぱり、可愛いんじゃないよ。
目も心も奪われて、自分のものにしたくて堪らなくなる。
捕まえててほしい、とか思ってる場合じゃない。
もう、とっくに捕まってるんだ。
そうだとすると、ケダモノはあなたの方かもしれない。
「がおー………なんちゃって、ね」
ぬるくなったコーヒーを、ポケットに突っ込んで笑う。
だって、やられっぱなしはカッコ悪いから。
オレだって、本気出さなきゃね?今に見てなよ。