第46章 かわいくない
【AさんとOさん】
side.A
昔はあまり接点の無かった彼が、可愛いとも言われると知ってた。
その度に、ぼんやりと、もやもやとしてた。
どうしてかは、知らない。
ただ、分かってることもあった。
オレには彼が、とてもキレイに見えるんだって。
いなくなっちゃいそうで、離れてほしくない。
オレは絶対に離したくなくて。
いっそ、捕まえててほしいとすら思う。
「ねぇ………おーちゃん?」
「なぁに、そんなに見て。俺の顔、何か付いてんの」
「んーん?大丈夫」
何となくリーダーの声を聞きたくなって、呼びかけた。
当然、話すことは無い。
だから首をかしげるのを見て、その真似をする。
それと同時に、笑ってはぐらかした。
面白いね、と軽やかに笑う顔が眩しい。
あ、かわいいな、と思った。
力の抜けた表情は、みんなが言うように確かに可愛い。
けど、違う。それだけじゃない。キレイ、なんだ。
オレから興味を失っただろう彼を、邪魔しないよう眺める。
暇潰しに雑誌をめくる指も、どこか温度の無い視線も。
何もかもに惹きつけられた。
リーダーはキレイだし、きっと食べたら美味しいだろう。
その想像に、背筋がゾクリとする。
心地好い痺れを逃がしたくて、ふーっと息を吐く。
「ちょっと出るね。時間が近付いたら呼んで」
席を立って、そう頼んだ。
ドアに手をかければ、了承の言葉がリーダー以外から返ってくる。
そうだ。彼は優しいけれど、偶にオレに対してこういうところがあるんだった。
勝手にへこんで。でも、そういうのもイイなぁって。
頭、冷やさなきゃ。
ケダモノみたいな眼になってるかもしれないから。
自分のキャラクター的に、五人のときにはマズイもんね。
そうじゃなくても、良くないんだろうなぁって思う。