第45章 はめられた指環
【OさんとNさん】
side.N
まさしく、青天の霹靂。
右手の小指に銀の輪っか、なんて。
ゲームが佳境だというのに、動揺からか手元が狂う。
ささやかな八つ当たりだとは思うけど。
何それ、急に色気づいたの。
そんな揶揄が浮かんで、でも何故だか口に出せない。
もらった、なんて言われたらどうしようもないじゃない。
誰からなのか。どんな関係なのか、問わずにはいられない。
いや、違う。見てしまったからには俺は問うてしまう。
「大野さん、ソレ、どうしたんです」
「あ、コレ?まぁ、何となく?」
「へぇ……そうなの」
普段通りを装って聞けば、すぐにぴんと来たようで手を見せてくる。
隣りに座ることが多い、そのいつものことが裏目に出たような気がした。
まざまざと見せつけられたような、そんな気がしたんだ。
それ、とか。これ、とか。
アナタとはその辺り、通じ合えると知っていた。
知らず知らず抱いてた、ちょっとした優越感。
それに打ちひしがれるときが来ようとは。
相葉さんなら長い付き合いって明確な理由があるけれど。
アナタとは、そういうのが無いから。
だから、通じることが嬉しかったのに。
この消化不良の感覚は、何だろう。
「ニノは、鋭いけど。鈍いからさ、ヒントやるよ」
「はぁ?」
訳の分からない言葉と共に、俺の手は握られた。
触れた部分の血流が、速くなったような感じがする。
何だか、あつい。
にっこりと笑うアナタへと、視線が縫い付けられる。
目が離せない。逸らせない。
その笑顔を、俺は。独り占めしたいと思った。
一人だけで、もっと近くで見たいのだと気付かされた。