第45章 はめられた指環
「え?なに?ゴメン、聞き取れなかったみたい」
とても小さな呟きは、俺を素通りしてしまったようだった。
俺が、ちゃんと?そこまでは聞こえたんだ。
その先が分からない。
ちゃんと、どうするんだ?
しっかりする。頑張る。メンバー全員に気を配る。
もっと、ちゃんとする。
ぱっと思い付くのはこれくらいだ。
あぁ、もしかすると。
暗に窘められたのかもしれない。
だとすると、やってしまった。やらかして、しまったのか。
オレは才能だとかが足りないから。追いつけないから。
対等である為には努力が不可欠だのに。
そうしないと、隣に立てないのに。
「あぁ……そっか、そうだね。分かった。うん、そうだ」
「しょう、くん?………何か、こわい顔してる」
「大丈夫だよ?オレ、ちゃんとやるし。頑張るから」
そう言って、再び新聞へと目を遣る。
視界の端であなたは、どこか泣きだしそうな顔をしていた。
それは、多分、オレの気の所為なんだろう。
オレがあなたを見すぎなんだろな。
だけど大丈夫だよ、迷惑をかけないようにする。
しっかり頑張るから。メンバー全員に気を配るから。
もっと、ちゃんと、するから。
あなたに凭れ掛かっているのも、直すから。
あなただけに甘えてしまうのだって。どうにかするから。
だからね、どうか。
どうか、お願いだから。オレのこと、見捨てないで。
何だってするから、隣に立たせてよ。
何故か、文字が滲んで見えた。それも、気の所為だね。
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