第12章 幸村のターン
直美は碁石がパチパチと置かれる音で目を覚ました。
ゆっくり目を開ける。
すると氏政と幸村が囲碁勝負をしている姿が視界に入る。
(へっ!?なんで??)
状況がわからないのでとりあえず寝ているふりを続けていると
『俺の負けだ』
いつもの聞き覚えのある台詞が聞こえた。
勝負が終わった様だ。
ゆっくり体を起こす。
それにすぐ気づいた幸村が直美に体を向けて姿勢を正した。
『お休み中のところ失礼いたしました。今日より数日、直美様の護衛として仕える事になりました真田幸村と申します』
(やっぱり間違いない!本能寺の森で会ってる!気づいてるのかな?)
直美もしっかり正座すると頭を深々と下げて挨拶を交わす。
『こちらこそ真田様が来ている事に気付かず大変失礼いたしました。直美と申します』
(こいつ、俺に気づいてるのかいねーのか、一体どっちなんだ?)
一瞬目が合ったものの、お互いの表情からは何もわからない。
(やっぱり分かってないのかな)
(ダメだ、わかんねー。早いとこ連れ出した方が良さそうだな)
『城下町に出る許可をいただきました。準備が終わりましたらお呼びください』
幸村はそう言うと立ち上がり、氏政と直美に一礼して部屋を出て行った。