第12章 幸村のターン
『今日は隣国の大名との謁見が続く予定だ。戻るのは遅くなる。先に寝ていろ』
『分かりました』
騒動の後でまだ色々な処理が残っているため、氏政は公務が遅くまで続く予定だった。
城下町に出かける支度を終えると廊下で待っていた幸村に声をかけて城下に向かって歩き始めた。
城門をくぐって城下に出る。
すると幸村がこっちだと言って直美の手首を掴み、足早に歩き始めた。
『ちょっと!いきなり何!?』
『いいから黙ってついてこい』
幸村に連れて行かれたのは最近出来たばかりの小さな甘味屋らしき一軒家。
パッと見ただけではここがお店だという事に誰も気づかない。
実はこの店は三ツ者が借り上げ、幸村と情報交換をする場所として使われている建物だった。
周囲を警戒しながら中に入るとすぐに奥の座敷に案内される。
やっと幸村が口を開いた。
『この店なら安全だ。ここなら何でも話せるぞ』
そう言うと直美に向かい合って座った。