第12章 幸村のターン
次の日の朝
幸村は小田原城からの使者に呼ばれ、日が昇る前に登城することになった。
これから少なくとも5日間、直美の護衛として仕える事になるのだ。
軒猿の一人に城の見取り図を渡し、城下にいる三ツ者を通して大至急春日山に届ける様伝える。
もちろん今日から5日間が急襲をかけるには絶好のチャンスだという情報も急いで文に書いて地図と共に託した。
城内はまだ夜明け前ということもあって静まり返っている。
城からの使者の後ろを歩き、見張りのいる廊下を真っ直ぐ進むと一番奥に部屋があるのが見えた。
そしてその部屋の前には風魔小太郎の姿がある。
小太郎は幸村を見ると丁寧に一礼した。
『少しの間留守にしますので、私に代わって直美様の護衛を頼みます』
『ああ、任せておけ』
『今は後ろにある氏政様のお部屋にいらっしゃいます。氏政様から声が掛かるまでは廊下に控えて警戒を怠らぬようにしてください』
そう言うと小太郎は歩き始め、あっという間に姿が見えなくなった。