第2章 安土城
(そういえば三成君がいない、どうしたのかな)
そう思った瞬間
『信長様、三成です。お待たせいたしました』
広間の襖が開いて三成が現れた。
『これで全員揃ったな。これより軍議を行う』
『わ、私はいない方がいいですよね、まだ怪しまれている身分ですし…』
一人だけ完全に場違いなので自ら退室しようとしたが参加するよう信長に命じられてしまう。
『三成、今持ち帰った情報を報告せよ』
『はい。本能寺の夜の件ですが、政宗様が直美様と安土城に向かわれた後、周囲に残された気配を部下と共に調べました。
すると少し離れた場所で黒装束の男たちが複数人、斬られて息絶えた状態で見つかりました』
(ああ、それ絶対に謙信様たちがやったやつだよ…)
『誰がやったのかまではわかりませんでした。
ですが無駄なく急所だけを狙ったところを見ると、かなり手慣れた者がそこにいたのは間違いないでしょう』
(知ってる事言った方がいいのかな)
『その場から森の中に続く血痕を私の部下3名に辿らせたのですが…こちらへ戻る前に全員が無残な姿で見つかりました。彼らの状態から黒装束の男たちを殺めた者とは違う者の仕業と見ています』
(えっ!?まだ他に誰かいたってこと?)
ここで光秀さんが私に話しかける。
『直美、さっきから一人で百面相ごっこだな。ささやかな頭で何を考えているんだ?』
『百面相だなんて大げさです…』
『あんた全部顔に出てるよ』
家康からも指摘された。そんなに顔に出ていたのか。今度から気をつけよう。
『三成、報告を続けろ』
信長に促されて三成からの報告が続く。
『黒装束の男たちは顕如の手下で間違いないでしょう。そして本能寺の一件は顕如が黒幕であると見ていいと思います。私からの報告は以上になります』
『大儀であった。秀吉、三成、亡くなった部下の家族がこの先困らぬよう取り計らってやれ』
(信長様、やっぱりいい人だ!)
ここで再び光秀さんが私をけしかける。しかも怪しげな笑顔で。
『直美、お前が知っている事を言っておかないと、いつ秀吉に斬られるかわからんぞ。斬られてもいいなら構わないがな』
私が何か知ってる事はもはや全員にバレバレだ。怪しまれて斬られるくらいならここで話した方がいい。
『待ってください!斬られたくないです。話します』