第2章 安土城
広間へ入るとすでに信長様がいて、家康ともう1人のタレ目の男の人と話をしていた。
家康は元々目付きが悪いのがわかったからいいとして、タレ目さんは確実に私の事を敵意むき出しの丸出しで見ている。
(初対面でいきなり怖すぎるんですけど…)
『見違えたな直美。此方にこい』
信長様に声をかけられ、正面に正座して頭を下げた。
『本能寺が燃えた夜、あの状況で俺の命を救うとはよほどの運の持ち主。少しでも逃げるのが遅れていたら間違いなく俺は今ここにはいられなかっただろう。
お前はこれより織田家ゆかりの姫としてこの城に置く、せいぜい強運をもたらすがよい』
(はあ?姫?何言ってるの?)
『信長様!こんな怪しい女を城に住まわすなど正気なのですか?お前なぜあの夜本能寺にいたんだ!どこかの間者じゃないのか?何が目的だ』
タレ目さんがすかさず反論してきた。
『秀吉、ならばお前が直美の面倒を見ろ。部屋は安土城に用意してやれ。怪しい者かどうか自分の目で見極めろ。わかったな』
『なっ!………承知致しました』
(なるほど、この人が豊臣秀吉ね。そして信長様の意見は絶対なわけだ)
『怪しい所があればすぐに斬るからな』
寝る場所と食べる物はこうして確保できたものの喜ぶ気分ではなかった。
今はこの状況を受け入れるしかないのだけど簡単には頭の中を整理できない。
ここでお世話になりながら未来へ戻る方法を見つけよう。今出来るのはそのくらいだ。
『直美、必要な事があれば何でも言うがよい。わからないことがあればここにいる奴らに何でも聞け』
信長様って第一印象と違って優しい感じがする。
再び信長様に頭を下げ、家康の隣に移動した。
『あんた、正体もわからないのに随分信長様に気に入られてるんだね。信長様があんな優しい表情してるの見たことない』
家康はそう言っているけれど、そう言われてもピンとこない。
普段笑ったりしないのかな。
信長様の事をもっとよく知りたい、そう思った。